自分ごとの政治学

中島岳志(NHK出版)
私が政治を「自分ごと」と捉えらるようになったきっかけは、自分より若い人たちの言葉でした。
2015年の安保法制の成立を前に、当時の大学生たちが声を上げ始めました。
私が直接聞いた中には高校生もいました(それは夫の元教え子でした)。

彼、あるいは彼女たちの言葉は、自分たちの中から出てきた余計な装飾のない言葉で語られ、
それは私が今まで聞いてきたどの「政治的発言」とも違うものでした。
政治について語る言葉を持たない自分を恥ずかしく感じ、まずは知ること学ぶことから始めたのです。

するとどうでしょう。
高校生の彼女が言っていたように、「政治と生活はつながっている」ことが、あらゆることに感じられるようになったのです。
言葉は後から付いてきます。きっと行動も。

本書は、政治と自分のつながりを見つけるための、初心者向け(に見せている)一冊。
「右」「左」といった用語の背景から、今の日本の状態、政治家としてのガンディーなど、
読みやすくも意外と広く語られてこなかった内容で興味深い。

特に、民主主義の主語が「生きている人たち」なのに対し立憲主義の主語が「死者たち」であり、
死者をないがしろにして共同性を失った私たちこそが民主主義を暴走させている、
という指摘にははっとさせられました。

彼はもう、生きてはいないけれど、死者としてたしかに存在していて、私と対話を続けているんだーー。なぜこんな当たり前のことに気づかなかったのだろう、と思って、深い安堵感を覚えました。そして、この「出会い直し」を大切にすることこそが、私がこれから「よく生きる」ということなのではないか、と感じたのです。(『第4章 死者と日常の政治学』より)


▲a piece of cake 4u▽

ひと切れのケーキの力を信じて。 from広島